ダイアリーズの今日は何の日?
今日は「文化の日」だそうです。
独立する前のサラリーマン時代から、経営者のセミナーなんぞに参加させていただいていたものですから、
お店を出した時も企業理念は「文化を作る!」だなんて掲げてるんですが、今思うと浅いですね~!www
そもそも文化なんて、作られるもんじゃなく発生するもんじゃない?と俯瞰してみてやっと分かります。
まあでも、なんでも最初から分かるわけはないので、痛いこといっぱいやって生きてくのは大事ですね。
diariesに文化なんてあるのかしら?
ぶんか社って強烈に耳に残るCMがありましたが、ありゃ浅草橋ヤング洋品店の影響だな。
じゃ、商品紹介です。
ドウゾ!
【ブランド】1ST PAT-RN(ファーストパターン)
【アイテム】Duster
【価格】¥75,600-(税込)
【コメント】
またまた強烈なのが届いてます。
昨年、服好きの一部のお客様の間で強烈なインパクトを残した1ST PAT-RN(ファーストパターン)。
diariesでも、そろそろイタリア物を始めようと思うきっかけになったブランドです。
まあたまたま同時期にFraizzoliやら7CCRやらセレクトしてて、あれ?久々にイタリア物に手を出したな~という、
いつもの大したビジョンを持ち合わせてない結果論的セレクトですけど!
まあ私にとってはイタリア物の引き出しを小出しにしているだけなので、特別新しいことを始めたつもりではないんですけど。
でもお客様にとっては珍しく映るのでしょうか?
ウチは過去にもFILSON ITALY(フィルソンのイタリア製コレクション)も取り扱っていましたからね。
実は8年前のオープン時から取り扱っていましたが、もう廃盤となってしまいました。
昔からご来店いただいているお客様には、懐かしいお話かもしれませんね。
フィルソンイタリーを知ってるという方も、すでにマニアックな部類になってしまうのでしょうか。
まあそんあ積もる話は置いといて、フィルソンイタリーが抜けてぽっかり空いた穴も、
本日ご紹介するブランドが補って余りある存在であることは、間違いありません!!!
もったいぶっててもしょうがないので、まずはブランド紹介からいきましょう。
1ST PAT-RN(ファーストパターン)は、デザイナー・Cristiano Bertoにより、2011年に立ち上げられました。
ブランド名の由来は、ミリタリー用語として使われた”First Pattern”(=一番最初に作られるプロトタイプ)から来ています。
服作りのコンセプトは、シンプルでFundamental(=基本的、重要)なものであること。
洋服として普遍的な構造・品質・デザインを生み出し、生地や縫製にこだわり1着1着最高の服を作るために、大量生産も行いません。
デザインのインスピレーションは、主に「Civil」「Military」「Utility」などの機能美からきています。
また1ST PAT-RNの服は、糸や生地の生産から、ボタン・レーベル・タグ・加工や仕上げなど、全てがイタリアで行われており、
伝統的でシンプルなデザインと、オーセンティックなイタリアの工芸品とも呼べる物作りが組み合わせたいと考えています。
そして、デザイナー・Cristianoが”We must try to wear them, to understand.”と主張しているように、
1ST PAT-RNの本当の良さは、実際に着てみないと分からないことにあります。
長く大切に着て初めて分かる良さを教えてくれるような服作りが1ST PAT-RNの服です。
そこには、伝統的なイタリアの物作りを後世に継承していきたいという、Cristianoの思いがあふれ出ています。
というブランドです。
まあdiariesらしいかな。
当店のお客様に分かりやすく例えるなら、また誤解を承知で言うのならば「イタリアのTENDER」といったところでしょうか。
いや、それはこのファーストパターンに大変失礼ではあります。本当に申し訳ない。
しかし言い得て妙で、実はこの2つのブランドには共通点もあるんです。
どちらのブランドも、そんなに型数がありません。
ざっくり言うと、トップスが5型にボトムス5型程度。
そしてそれぞれのアイテムごとに2,3種類の素材を載せ替えることができる。
さらにです、例えばテンダーのウイリアムなんかは、デザイナーよりもセントマーチンの講師業としての立場が強いのですが、
ファーストパターンのクリスティアーノも、このブランドよりもイタリアのデザイナーを相手に、
コンサルやコーディネートを行う仕事を生業としています。
つまり、どちらのブランドも本当に好きな物しか作らず、また素材に徹底的にこだわります。
そして彼らは、当たり前のように自国生産にこだわります。
「俺の生まれ育った国は、こんなに素晴らしい物が作れるんだぞ。」という声が聞こえてくるようです。
そうなんです。ブランド説明に最後にも書いてありますが、
思いを込めて服を作るとね、溢れ出て来ちゃうんですよ。何かがね。
個人的にはね、ずーっと待ってたんです。このような「ドレスワーク」のブランド。
テンダーもそうでしたが、このファーストパターンも10年に一度の衝撃と言えます。
ちなみに10年前はフィルソンイタリーで、さらにその10年前はセイジクロキとかTOKITOかな?
いずれにせよ、トラディショナルやクラシックを踏襲しつつ現代的な服として新しく生まれ変わったジャケットになります。
しかし、今回のアプローチは全く異なります。
最先端とクラシック、ミリタリーという非日常性を帯びたディテールを持ちつつデイリーウェア(日常)としての圧倒的な存在感。
個人的には、この圧倒的=プレッシャーを約20年前にも感じたことがある。
その服とは、STONE ISLANDまたはC.P.COMPANY。
そしてそれらの歴史を刻んできた、Massimo Osti(マッシモオスティ)とPaul Harvey(ポール・ハーベイ)。
まあこの2人に関しては説明すると長くなるので、ご興味のある方はご自身でお調べいただきたいのですが、
特にマッシモオスティに関していえば、現代の服作りの神に例えられるなど、伝説の人になってます。
ざっくり言うと、マッシモオスティとマルタンマルジェラの2人だけで、現代の服はほとんど説明できるのではないか?
(なんてそれっぽいこと言ってみた!www)
その文脈で言えば、すでにマッシモオスティがやってたよと思う方もいらっしゃるかもしれません。
いいえ違います。
本日ご紹介するパンツは、以前ご紹介したインディゴジャケットとはまた正反対の性質を持っていると思います。
それが1人のデザイナーから生まれるということが凄いことなのであります。
奇しくも、このファーストパターンもマッシモオスティも、それぞれフォッリーナとボローニャというイタリア北部の街を拠点としています。
何でですかね?
そんなわけで、次々と革新的な素材を組み合わせ新たなデザインが生まれてくるイタリアから、
これまで味わってきた興奮を1ST PAT-RNを通してまた味わえるのではないかと、勝手に期待しているわけです!!!
しかもまだほとんど日本国内で出回ってないしね!
ブランドの黎明期からピークに至るまでを体感できる、またとないチャンスでもあると思いますよ!
すいません。前置きが長くなってしまいましたね。
それでは詳しく見ていきましょう。
品名はDuster。なんのこっちゃないダスターコートです。
が、先日ご紹介したYarmoのダスターコートとはうってかわって、胸部の形がものすごく洗練されています!
肩回りはフィットしてて見た目もスッキリ。
前合わせはシングルですが、合わせが若干深く入っており、襟を寝かせるとVゾーンが非常にきれいに出ます。
見た目は普通すぎるくらい普通なのですが、このコートの圧倒的なのは素材。
Batavia Nylonと名付けられたこちらの素材は、「コットンスピンシステム」という技法で作られたナイロン糸で織られた生地。
コットンだかナイロンだかよく分からないでしょ?
説明しよう!
この生地は、防水性・防風性・速乾性といったナイロンならではの特性を維持しながら、
コットンのような天然繊維が持つ不規則・不均等な糸を開発し、綿紡績を行ったものだそうです。
言い換えますと、ナイロンの良さとコットンの良さを合わせて、2で割らない!ここ大事!
相反する素材のメリットが合わさっているんです!いやむしろ掛け算!
こんな生地初めて見ましたよ!!!!!
またどうやって作ったのか聞いてみると、ナイロンをミクロ単位まで細くして、
綿と同じような繊維構造にしているんだとか。
よく分かりません!
そして実際のこの生地ですが、知らないで触ってみると、最初戸惑いますね。
ナイ・・・ロン・・・なのか?ってね。
今まで我々が見て来たナイロンではないんです。まるで硬さが感じられない。
しかも、例えばどれくらいのコットン生地かというと、シーアイランドコットンに例えても足りないくらいの肌触りです!
ちなみに同じ素材で昨シーズン発売されたグルカパンツを履いていますが、
いや~~~~~~もう履きまくりましたね。
履きまくった結果、毛玉が・・・
つーかナイロンで毛玉ができるってのも、糸が細い証拠ですね。
天然繊維と同じ構造を求めた結果、毛玉ができるというデメリットが生まれてしまった!!!
しかし、個人的にはむしろ歓迎です!(苦し紛れではなく!)
だってこの方がより天然繊維ぽく見えるから!!!(やはり苦しいか!?)
いやでも気にならないですよホント。
着心地もヤバくてね。
ナイロンのくせに梅雨時期のむしむしした生地も蒸れないしね、濡れてもすぐに乾くし、多少の水は通しません。
またシワにならないのと、軽さが良いです。結局ずっと履いてたくなるってこと。
夏は夏で良いとして、秋冬は今度は防寒性ですが、風を通さないのでインナーダウンを着ちゃえば、結構長いこと着られます。
ちなみに、ウールのニットは重ね着に向かないかもしれません。
気になるのは静電気。アクリルのニットなら大丈夫ですけど。
フリースとかも静電気は起きにくいと思います。
化学繊維は化学繊維と、天然繊維は天然繊維と合わせると、静電気て起きにくいんです。
これマメ(知識)ね。
でもこの「属性」を意識するのは大事です。コーディネートでも役に立ちますよ!
あとはディテールですね。
ボタンはコロゾボタンを使用。コロゾは象牙ヤシと言われる実を削って作られたものです。
ご覧の通り、象牙のようなマーブル模様が出てますね。
ポケットの仕様もなにげに細かいです。
マチが設けてあるので、たっぷり収納。
そしてフラップをめくると、
ここにもコロゾボタン、、、ではなく、ボタンを留めるフラップの形状に萌えます!
個人的にはちょっと使いづらいんですが、おそらく防水性を高めるためのディテールで、
ワークウェアかミリタリーウェアからインスパイアされたものだと思います。
着てみるとこんな感じです。
カッチリ着てもいいのですが、ドレープが利いてリラックスした雰囲気にもなるので、
イージーパンツにスリッポンみたいな、こんな感じでもOK!
つまりどうとでもなるよってこと!!!
しかしどうにもならないのは価格で、まあ正直高いとは思いますよ。
実は別の生地にすれば1万は下がったんです。
しかしながらこれしか頭に残らなかった。
だから高いのは完全に生地代なんですよ。
でもね、この生地を使うことに意義があると思うんです。
ここからは私の想像ですが、
こういう生地って、作られたばかりだから、それまでの研究開発費を回収するために、どうしても高くなると思うんですよ。
なので、どのブランドが作ってもこれくらいの価格になるはず。
だからどうしても最初に使うのって、グッチとかプラダみたいな有名なスーパーブランドになると思います。
有名ブランドだったら10万でも売れるでしょ?それならなんだって作れます。
だからこそ、まだまだ(少なくとも日本では)無名のブランドが使うことに価値を感じるんです。
そしてそんなチャレンジ精神に溢れるブランドだからこそ、私もセレクトする価値があるように思います。
間違いなく価値のある服と、価値あるブランド。そしてそこに価値を見出し、diariesも価値のあるセレクトショップになれたらと思います。
そこにあるのは、私が正しいと思う価値の連鎖。
そしてその連鎖をデザイナーへと最後につなげるのは、お客様なのかもしれません。
価値カチカチ価値うるせーなと思われるかもしれませんが、
つい熱くなってしまうのは、多分この服が熱い想いで作られてるからなんでしょうね!
それではまた。お店で会いましょう。