フランス北西部に位置するブルターニュ。そこで暮らす若き青年Pierre Brestは、複数のアパレルメーカーのセールスマンとして働きながら、ひとつの構想を思い描いていました。ブルターニュに古くから伝わる横シマ模様のニットセーター。船乗りに愛され続けるこのセーターは当時からフランスを代表する象徴的なマリンウエアの一つと考えられていました。その当時このアイコニックなセーターを商業化しているメーカーは他になく、ピエールはそこに大きな可能性を感じていました。意を決したピエールはセールスマンを続ける傍ら、Kanell Industrielという個人会社を立ち上げ、知り合いの工場から中古の編み機を買い取り、自社での製品製造の可能性を模索していきます。試行錯誤を続ける中で、現代にも引き継がれる様々なディテールを備えたモデルの原型が生まれます。のちにブランドをアイコンとなっていくモデルの原型はこの声に産声をあげました。これらのモデルを引き下げ、1923年、ピエールは自身のブランド”KANELL"を立ち上げ販売を開始。得意のセールスにより徐々に取引先を増やしていきました。それはブルターニュに最古のマリンボーダーメーカーが生まれた瞬間でもありました。ビジネスが軌道に乗り始めた1927年、ピエールは正式に彼の会社を法人化、社名とブランド名を刷新し、さらにビジネスを加速させていきます。新会社は順風満帆に成長を続け、フランスで認知される傍ら、その特徴的なディテールからデザイン面での評価も高く、国内外のデザイナーからも支持され多くのコラボレーションモデルを生み出しました。時を経て現在、様々なマリンウエアブランドが誕生するなかで、ブルターニュ最古のマリンボーダーブランドとして、ピエールが思い描いた理想のマリンウエアを今一度具現化すべく原点回帰し、彼の生み出したオリジナルブランド”KANELL"が一世紀の時を経て再始動します。