1929年、アメリカはマサチューセッツ州・ローレンスにて、仕立て職人であったイタリア系移民のニコラス&ビトのグリエコ兄弟が、小さなテーラーを開業したことから歴史は始まります。当初手掛けていたのは、厚い肩パッドとシェイプされたウエストをもつ、構築的な英国スーツに影響を受けた製品でした。しかし1930年代に入ると、肩パッドを省いたナチュラルショルダーに胴絞りのないシルエットという、対極ともいえるボックスシルエットを考案しました。これこそが、現在まで継承そして確立されているアメリカンスーツの基本スタイルになったのです。またスーツの製造に関しても新しい取り組みを始めました。個々のテーラーが手縫いであつらえる注文服であった時代に、職人の分業とマシンの併用によって工場で量産する既製服化にも着手。誰が着ても同じシルエット、誰が作っても同じクオリティとなるそのスーツは、実にアメリカらしい合理主義に即したものだと思います。その後、ブルックス ブラザーズ、J.プレス、ポール・スチュワートといったアメリカントラディショナルのトップブランド、西海岸屈指のメンズショップであるケーブルカークロージャーズなどのスーツを一手に担い、さらには米海軍のブレザーも生産。かのエイブラハム・リンカーン、ウェルドレッサーとしても知られるJ.F.ケネディ(ブルックスブラザーズのNo.2ジャケットを着用)を筆頭に、多くの歴代アメリカ大統領や政財界の要人がブルックス ブラザーズのスーツやブレザーに袖を通してきたことは有名ですが、それを実際に仕立てていたのがサウスウィックなのです。1990年代、コスト削減のため生産拠点を海外に移すメーカーが殆どの中、サウスウィックは頑なにMADE IN USAを守り通しました。結果、アメリカ製を貫く希少なテーラリングファクトリーとしても評価を高め、その優れた品質から2008年にはブルックス ブラザーズの傘下に入り、同社の最高峰ラインのスーツやジャケットを製作しました。しかし2020年、米国・ブルックス ブラザーズの経営破綻に伴って、惜しまれつもサウスウィックも閉鎖してしまいます。しかしアメリカントラディショナルの灯火を絶やしてはならない強い想いと、それを後世につなげるべく、長く深い信頼関係をもつSHIPSが、2022年よりブランドのヘリテージを受け継ぐこととなりました。